【インタビュー】日本の子どもの貧困問題を考える①~川越最明寺での活動より


この記事では川越で子どもの貧困問題解決に取り組む団体へのインタビューをお伝えします。(取材:尚美学園大学 音楽応用学科 イベントゼミ)

今回は 川越市大字小ケ谷にある最明寺の副住職、千田明寛様にご協力をいただきました。



  1. 現在のお仕事と経歴を教えてください。
     お坊さんです。2015年に比叡山延暦寺での修行を終え、お坊さんの資格を得ました。
    その後、2015年から2016年にかけてインドに一年間留学し、比叡山の開教使として仏教の教えを広める活動をしていました。そして2016年に帰国してからは、最明寺で
    副住職をしております。
  1. どういったきっかけでSDGs(持続可能な開発目標)への関心を持たれたのでしょうか。
     特にきっかけがあったという訳ではないのですが、実は大学時代に国際政治学を専攻し、国際連合の役割・活動について学んでおりました。元々国際問題に関心を持っていたこともあり、SDGsができる前のMDGs(ミレニアム開発目標)の頃から知っており、自然とSDGsへの関心を持っていましたね。
  1. 現在行われている支援活動についてご紹介をお願いします。
     現在取り組んでいる活動は、『おてらおやつクラブ』『フードパントリー』『てらこや』の3つの活動です。

     
  1. こういった支援活動を始められたきっかけは何でしょうか。
     パントリーの活動を始めたきっかけは、以前から関わっていた『おてらおやつクラブ』の活動で、川越子ども応援パントリーの時野 閏さんと出会ったことが大きかったです。
     この『おてらおやつクラブ』は、大阪で母子が餓死した事件がきっかけで奈良のお坊さんが始めた活動です。私もその事件を知り、心を痛めてこの活動に加わることにしました。そこで時野さんと出会い、ご縁があってパントリーの活動を始めることになりました。
     
  2. 時野さんとのつながりがかなり強いのですね。
     そうですね、僕はアメーバみたいにいろいろな人とくっついているんですよ。お寺単体でやっていてもあまり意味がないと思っていて、専門分野の方とくっついて初めてお寺は力を発揮できるのです。お寺には広い場所もありますし、”お寺”であることで信頼も得られます。単独ではなく、時野さんという子どもの貧困について専門的に関わっている方や連合埼玉などと、アメーバのようにくっつくことが私の個性のひとつでもあります。

  1. 支援のためのイベントをお寺で実施する強みは何であるとお考えでしょうか。
     時野さんがパントリーの活動を行う場所を探していた時に、公民館やその他有料で借りられる施設などさまざまな場所が候補に挙がっていたと思うのですが、たくさんの人を受け入れることができて無料で借りられるところはあまりないですよね。誰でも出入りができる広い場所を提供することがお寺の強みだと思っております。
     また、本来お寺というものは同様の活動をしておりました。お寺の本質とは、生きている中で困っている人や悩みを抱えている人にどう寄り添っていくかというものですので、こういった活動をすることは本来あるべきお寺の姿だと思っております。
     しかし、今のお寺はお葬式一辺倒で、かつての姿から大きく外れてきてしまっていると感じています。「これからの時代もこのままで良いのか」という悩みをずっと持っていて、やはり原点となる活動に戻る必要があると考えました。今ではパントリーやてらこやの他に、セクシャルマイノリティに関わる活動などさまざまな支援活動の協力に舵を切り始めています。
     
  2. 支援活動を行う上で印象的な出来事があれば教えてください。
     以前、支援活動をNHKの番組で取り上げていただいた際に大きな反響があり、さまざまな方面からお問い合わせをいただきました。「うちも困っているので支援してほしい」といった保護者の方からのお問い合わせや、「私たちの団体も支援活動に参加したいのですがどうすれば良いでしょうか」といった団体からのお問い合わせです。
     このようにさまざまな声をいただいた時に、お恥ずかしい話ですが「世の中にはこんなにも困っている人がいたのか」と気付かされましたね。お寺に籠っているだけでは、決して知ることがなかったことだと思いますので印象に残りました。
     
  3. 千田様ご自身の視点で、支援を必要とする子どもたちのために必要だと感じるものは
    一体何でしょうか。
     私自身の視点で言いますと、お寺は「その人に寄り添える存在」であるべきだと思います。「寄り添う」というのは、どんな時でも常にそばにいてくれる。特別なことはしてあげられないかもしれないけれど、何かあったときに自分のそばにいてあげることだと思います。そういった寄り添う存在として、お寺やお坊さんは普通の人とは違う存在でいられると思うんですよ。
     子どもたちに必要なのは、『寄り添ってくれる存在』だと思います。家族とかって「常に裏切らずに寄り添ってくれる存在」であるべきはずじゃないですか。子どもたちにとって、そういった存在になっていければ良いなぁと思いますね。
     
  4. これから支援活動を始めようとする方へ一言お願いいたします。
     まず、お寺という選択肢を一つ頭の中に入れておいていただければと思います。お寺はお葬式以外にももっと使っていくべきだと思うんです。相談すれば応えてくれるお寺はきっとあるはずなので、何か活動をしていきたいと思った方は一度近くのお寺に声をかけてみるのも手の一つだと思います。
  1. 貧困による悩みを抱えている子どもたちや保護者の方へのメッセージをお願いいたします。
     『おてらおやつクラブ』立ち上げのきっかけになった大阪での痛ましい出来事も、誰も助ける人がいなかったから起きてしまったことだと思うのですが、本来最後のセーフティーネットになっていた存在がお寺であると思っております。
     極限の状態まで困っていた方がいたとしても、まさか現代で「お寺に頼ろう」とも思わないでしょう。私は子どもたちやその保護者の方に「悩んでいたら最明寺を頼って下さい」と伝えたいですね。今ならパントリーや寺子屋を紹介できると思います。
     支援を始めたい方も支援を受けたい方も”お寺がある”という選択肢を持っていただきたいです。

  1. そうなりますと、やはり同業者であるお寺の協力も不可欠ですね。
     そうですね、地域の人々を広く受け入れる心構えが今のお寺には必要だと思っています。「お寺はもっと社会に関わっていくべきだ」ということが私の思いの根幹にあるものです。学校でも企業でも新しいことを始めていかないと淘汰されていくのに、業界が違うということもありますがお寺だけがずっと同じサイクルで動いていることに疑問を感じています。最明寺の場合は私が時野さんなど然るべき人へお繋ぎする…ということになってしまいますが、繋がりがあるだけでも違いますからね。

  1. 今後開催予定のイベントなどがありましたらご紹介ください。
    10月中 ピンクリボン運動  (乳がん)
    10/4(日)~11/22(日) SAITAMAレインボーフェスティバル(LGBTQ+)

 奇数月に1回開催 フードパントリー (食糧配布)
 毎週月曜日開催 てらこや (学習支援)

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